今日から3学期が始まりました。
生徒たちは、さわやかなあいさつとともに元気に登校しました。
3学期は、3年生は卒業後の新しい環境に向けての、1・2年生は1つ上の学年へと進むための準備をする学期です。
次学年0学期という意識でがんばってほしいと思います。
(3学期始業式式辞)
2017年を迎えました。一年の計は元旦にありと言います。皆さんの中には、今年こそはと新たに目標を立てた人も多いのではないでしょうか。
さて、年の初めに、あらためて「学校に通う」ことの意味を考えてみたいと思います。
ノーベル賞作家である大江健三郎さんには、知的な障害を持つ長男・光(ひかり)さんという人がいます。現在は作曲家として活躍している光さんは、子どもの頃から音に非常に敏感で、7歳のとき、小学校の特別支援学級に入学しました。ある日、大江健三郎さんが息子の教室を覗きに行くと、光さんは両手で耳をふさいで体を固くして過ごしていました。
それを見て大江さんは、「光はなぜ学校に行かなくてはいけないのだろうか。障がいは一生治らないのだ。野鳥の声を敏感に聞き分け、鳥の名前を教えることが好きなのだから、自然の中で親子三人暮らせばいいではないか」と思いました。
その後、しばらくして光さんは、自分と同じように騒がしい音を嫌う生徒を教室の中に見つけました。光さんは、その子に寄り添うようになりました。そして、休み時間には一緒に耳をふさぎました。運動能力が自分よりも低いその子のために、トイレに付き添ってあげるようにもなりました。
この行動を見て、当時の先生は「光くんは『自分が友達のために役立っている』と感じている。それまで母に頼ってきた彼にとってそのことが『新鮮な喜び』として感じられたのだろう」と言っています。
その後、光さんはこの友達と音楽をいっしょに聴いていると楽しいということを経験します。そして、13歳のときから作曲をはじめ、作曲家として成功したのです。
大江健三郎さんは、音楽と光さんとの関係を次のように述べています。
「光にとって音楽は…自分が社会につながっていくための、一番役に立つ言葉です。国語も理科も算数も体育も、自分をしっかり理解し、他の人たちとつながってゆくための言葉です。そのことを習うために、いつの世でも子どもは学校へ行くのだと、私は思います。」
光くんは、学校に通うことで、自分でも人の役に立てるという喜びを知るとともに、音楽を作ることが、自分にとって人とつながるための一番の手段だということを見つけたのです。
誰かに頼らなければいけない存在から、誰かに役立てる存在になることが、人が成長するということではないでしょうか。
皆さんは、自分はどんな場面で、どんな手段で人とつながっていけるのかを、もう見つけていますか?
学校で勉強をしたり、多くの友達と関わったりしながら、自分はどんなことに向いているのか、どんな大人になりたいのかを見つけていく3学期にしましょう。
以上で式辞とします。
平成29年1月6日
校長 野木森 広