学校日記

【校長室より】スマホ社会が子どもたちの脳と未来を蝕む〜岩倉市教師力ステップアップ研修に参加して感じたこと〜

公開日
2026/07/31
更新日
2026/07/31

校長室

日頃より、本校の教育活動および保健指導に対して温かいご理解と多大なるご協力をいただき、心より感謝申し上げます。

さて、子どもたちは今、待ちに待った夏休みをどのように過ごしているでしょうか。ご家族で過ごすかけがえのない時間が、笑顔にあふれ、心豊かで充実した毎日となっていることを願っております。

先日の学校保健委員会を紹介するホームページの中でも少し触れさせていただきましたが、現代の子どもたちを取り巻くネット・スマホ環境は、今や見過ごすことのできない大きな課題となっています。その問題意識をさらに深めるため、本日、岩倉市主催の「岩倉市教師力ステップアップ研修」に参加してまいりました。

そこで突きつけられたのは、現代の子どもたちの実態に関する、あまりにも衝撃的な医学的データと、私たちが直視せざるを得ない「緊急事態」の現実でした。多くの大人が「スマホには気をつけようね」とか、「ルールを作って上手に使いなさい」と言い聞かせていますが、実際にはルールを作って上手に使わせるのではなく、「使わせないこと」こそが必要であると冒頭でお話があり衝撃を受けました。また、これだけスマホの悪影響が日常のニュースやメディアで耳にする状況であるにもかかわらず、私たちはどこか「わかったつもり」になっているだけで、子どもを取り巻く環境は深刻に悪化し続けていることを強く指摘されていました。

その、今日の研修(講師:スマホ依存防止学会代表 磯村 毅 医師)で得られた知見をもとに、今、子どもたちの心身に何が起きているのか、保護者の皆様と同じ中学生の子を持つ身として、この危機感を共有したいと思い、HPをアップさせていただきます。


1.「毎日2時間の勉強」がスマホで無効化されるという現実

仙台市の大規模調査(中2数学)で、驚くべきデータが示されたとのことです。

  • 【飛行機チーム(最高・75点)】 毎日2時間勉強 + スマホ60分以下 + 夜ふかしなし

  • 【イルカチーム(3位・64点)】 勉強30分以下 + スマホ60分以下 + 夜ふかしなし

  • 【バナナチーム(2位・57点)】 毎日2時間勉強 + スマホ4時間以上 + 夜ふかしなし

  • 【救急車チーム(最悪・48点)】 勉強30分以下 + スマホ4時間以上 + 夜ふかしなし

このデータが示す最も残酷な真実は、「家で毎日2時間必死に勉強しても、スマホを4時間以上使って脳に深刻なダメージを受ければ、家庭で全く勉強せず学校の授業しか受けていない子(イルカチーム:64点)より点数が下がる(48点)」ということだそうです。 スマホの過剰利用は、子どもたちの努力のすべてを水の泡にしてしまうとのことでした。

なぜこのような逆転現象が起きるのでしょうか。その大きな理由の一つが、勉強の「質」にあるとのことです。スマホの過剰利用によって脳が傷つくと、前頭前野の機能が低下し、注意力が散漫になってしまうそうです。その結果、「正常な脳で効率よく集中して行う30分の勉強」とは異なり、「脳が傷つき集中できていない状態での、ダラダラとした質の低い2時間の勉強」になってしまいます。

さらに、家庭で2時間勉強している子も、30分しか勉強していない子も、同じように学校で授業を受けています。しかし最新のMRIを用いた脳科学の縦断研究で示されている通り、スマホの過剰利用は大脳(皮質および白質)の成長を停止させ、脳の構造そのものを傷つけてしまうことが分かっているとのことです。その結果、先生がどんなに面白い授業をしてもワクワクできず身が入らなくなったり、「将来のために頑張ろう」という前頭前野の働きが弱まって「もうどうでもいいや」と無気力になってしまうと言います。同じ授業を受けていながらも、知識や内容を吸収する「脳の力」そのものが深く傷つき、決定的な差が生まれてしまうのです。


2.脳の成長を止めるスマホ依存の恐怖(赤ちゃんの動画から見える異常さ)

研修の中で、磯村先生がひとつの動画を紹介されていました。 大泣きしていた赤ちゃんが、スマホを渡された瞬間にピタッと泣き止め、逆にスマホを取り上げられると激しく絶望する――そんな様子を映した映像です(実際の動画はこちらからご覧いただけます:YouTube動画:スマホを取り上げられて激しく反応する子どもたち)。

一見すると「面白い赤ちゃんの一コマ」に見えるかもしれません。しかし、赤ちゃんの喜怒哀楽が一瞬で激変し、機器に強く支配されている姿を冷静に見つめ直したとき、そこにあるのは微笑ましい日常ではなく、「人間の脳が本来持っている『嬉しい・楽しい』を感じる仕組みが、スマホの強烈な刺激によって乗っ取られている」という異常性を指摘されていました。

スマホによるインターネット利用は、週に数日の段階から脳の成長に悪影響を及ぼし、毎日使用の段階で成長が止まってしまうそうです。便利な自転車には危険性があっても依存性はありません。しかし、スマホには強力な依存性があります。「便利な道具だから」と依存性のあるものを子どもに与えることは、科学的・医学的な見地から見ても極めてハイリスクであるとのことでした。


3.全国で激増する「家庭内暴力」「不登校」「メンタル悪化」

中学生のスマホ所持率が急増した時期である平成25年を境に、子どもを取り巻く環境は激変したと言われています。

  • 小学生の家庭内暴力が約11倍に急増: 前頭前野が劣化・損傷し、感情のコントロールが効かなくなった結果、小学生が暴れ、恐怖のあまり保護者が警察を呼ぶケースが全国で1000件近く起きているとのことです。

  • 「Virtual Autism(仮想自閉症)」の多発: 過剰なスクリーン視聴が原因で自閉症に似た症状を呈する子どもが増えているそうですが、スクリーンを断つことで通常の発達に回復する事例も数多くあると言われています。

世界に目を向けると、オーストラリアでは「16歳未満のSNS・YouTube使用禁止法」が成立したとのことです。「家庭のルール作りや学校のリテラシー教育だけでは不十分である」と国が動いたのだそうです。欧州各国でも、教育用タブレットから紙の教科書に戻す動きが加速していると言われています。


4.保護者の皆様へ:本当に心苦しいお願いですが、子どもを守るために

本来であれば、これほど強力な依存性を持つテクノロジーに対しては、個々の家庭の努力に委ねるのではなく、社会全体や法律によってしっかりと制限・規制されるべきだと、私自身も強く感じています。

「家庭で厳格に管理しなさい」と学校からお願いすることは、保護者の皆様に大変なご負担を強いることであり、共働きなど、大変お忙しい家庭の事情がある中で、親子関係の悪化を恐れながら制限することがどれほど難しいかも、痛いほど承知しております。

しかし、IT企業の粋を集めた強烈な魅力と依存性に、未熟な子どもの意志力で勝とうとするのは、「竹やりで戦車に勝とうとするようなもの」です(Apple 元会長のスティーブ・ジョブズをはじめとするIT企業のトップたちが、我が子にスクリーン端末を持たせなかったことはよく知られています)。

制度や社会の仕組みが追いついていない現状の中、目の前の子どもたちの脳と未来の破壊から守り抜けるのは、今や私たち大人の毅然とした行動しかありません。

「うちだけ厳しくして浮いてしまわないか」「子どもとの関係悪化が怖くて言いづらい」――そんなときは、ぜひ保護者同士でこの話題を共有してみてください。「あそこのお家でもルールを作って頑張っているから」「みんなで一緒に気をつけようね」と、保護者同士で話題にし、お互いに協力し合うことができれば、ご家庭だけでは伝えづらく孤独になりがちな指導も、ぐっと行いやすくなるはずです。

どうか一度、今回の研修会の内容を胸に留めていただき、ご家庭でのスマホ・ネット・ゲームの利用環境を見直していただけないでしょうか。

  • 夜間の使用禁止、寝室への持ち込みをしない

  • 利用時間を制限する(できれば1時間程度)

この夏休みが、ご家庭での温かく幸せなふれあいに満ちた素晴らしい時間であると同時に、子どもたちの健やかな脳と未来を守るための大切な見直しの機会となりますように。学校と家庭、そして地域や保護者同士が温かく手を取り合ってこの危機を乗り越えていけますよう、心よりご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。