卒業式ありがとうございました。例年にない異例な形となりましたが、98名の卒業生が胸をはって母校を巣立っていきました。本当におめでとうございました。
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校長式辞
五条川の桜並木も華やぎ始める春がやってきました。今年の春は特別な春になってしまいました。しかし、桜の花の美しさがいつもの年と変わらないように、卒業する皆さんの晴れがましい姿、卒業することの価値には全く変わりがありません。
今年の卒業式は、三十九年の曽野小学校の歴史始まって以来の異例の形となってしまいました。来賓の方や在校生のいないこと、練習が一度もできない中で今日を迎えたこと、内容も簡素化が迫られたことなど、今までにないの形での式となってしまい、突然の休校で「卒業生を送る会も」実施できませんでした。このような形になってしまったことは、本当に悔しくて悔しくて、たまりません。卒業生のみなさんに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
しかし、最初に話したように、社会の状況がこうだからといって、卒業式の形がいつもと違うからといって、みなさんが六年間の努力の末に、小学校を卒業するという、素晴らしさには全く変わりがありません。誇りをもって胸をはってほしいと思います。
曽野小学校の教職員を代表として、晴れの日を迎えたみなさんに心の底からおめでとうと感謝を言いたいと思います。「卒業、おめでとう。そして今まで曽野小学校を支えてくれて、本当にありがとう。」
みなさんとの思い出は語り尽くせないほどありますが、特にみなさんがペア学年であった一年生に対して、いろんな場面で見せてくれた優しさは忘れることはできません。お兄さんお姉さんととして優しく接してくれている様子、みなさんの優しい笑顔が、私の心の中に深く残っています。
みなさんは、自分たちが思っている以上に心豊かに、優しくたくましく、成長しました。それはみなさん自身の努力もありますが、家族や地域の方々に大変お世話になったおかげであるということも忘れないでください。周りの人々への感謝の気持ちをもって、令和初の曽野小学校の卒業生として、自信をもち中学校に進んでください。
現在、みなさんを取り巻く社会は大変な状況です。東日本大震災や大きな台風でも中止にならなかったイベントが次々に中止され、学校も三月二日から突然休校になってしまいました。もしかしたら私たちは、今、第二次世界大戦以来の歴史的な危機に直面しているかも知れません。
しかし私たちは知っています。私たちの先祖は、戦争や災害に遭うたびに、どん底から立ち上がり、苦しみや悲しみを分かち合い、力を合わせて復興を果たしたことを。そして子孫である私たちに命を伝えてくれたことを。
今のピンチも必ず乗り越えられます。私たちの先祖がそうであったように、このピンチを乗り越える力は、私たち一人一人に授けられていると、私は信じています。
みなさんも社会の一員として、このピンチを乗り越える闘いに参加してください。
この闘いは、アニメや映画のようなかっこいい派出な闘いではなく、手洗いやうがいをしたり、咳エチケットに気を付けたり、人ごみに行くのを我慢したり、デマに流されず正しい情報をもとに判断したり、そういった静かな闘いです。
大人から子どもをふくめ、社会の一人一人がこの静かな闘いを続け、このピンチをみんなで乗り越えていきましょう。そのためには、みなさんの力も必要です。
保護者の皆様。本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。このような形での卒業式となったことを重ねてお詫び申し上げます。これまでお子様へ精一杯の愛情を注がれた保護者の皆様の、ご尽力に深く感謝と敬意を表します。小学校卒業という区切りは迎えましたが、お子様にはまだまだ皆様のお力が必要です。これまで通り、深い愛情をもって、お子様を支えていただきますようよろしくお願いいたします。
さて、卒業生のみなさん、みなさんは人生百年を生きる人たちです。二十一世紀を飛び越え、二十二世紀の世の中を生きる人たちです。二十二世紀はどんな未来でしょうか。AIに制御された自動運転の車が空を飛んでいるでしょうか。ロボットが街にあふれているでしょうか。今問題になっている様々なことは解決されて、すべての人々が平和で豊かに暮らしているでしょうか。
どんなに技術が進歩しても人として忘れてはいけないことが二つあると、私は思っています。一つ目は、人を思いやる優しい心です。人の気持ちを考え、人の悲しみや苦しみを自分のものとして考えることができるのは人間だけです。人間らしい優しい心をいつまでも忘れずにいてほしいと思います。
二つ目は、自分の頭で考えるということです。みなさんの前には、たくさんの難問があります。「人としてどう生きるのか」という個人の問題だけでなく、気候変動などの環境問題、少子高齢化の問題、貧困や差別の問題など社会全体の問題もあります。こうした問題にも、社会の一員として目をそらさずに、逃げずに自分の頭で考えてほしいと思います。なかなか答えはでないと思います。苦しく悩むことを多いと思いますが、自分の頭で考え悩み苦しむ向こうにこそ、本当の幸せがやってくると、私は信じています。
人としての優しさと、自分で考え抜くたくましさをもって、素晴らしい人生を歩み、みなさんの手で輝く未来を作ってください。期待しています。
いよいよお別れする時がきました。どんな時でも、曽野小学校は、みなさんの母校として、心優しき「ふるさと」としてあり続けます。いつまでも忘れないでください。
「ご卒業おめでとうございます。」そして 輝く未来に「いってらっしゃい!」
以上 式辞とします。
令和二年 三月十九日 岩倉市立曽野小学校長 木 本 純