南中校長室の窓「落ちないリンゴ」
- 公開日
- 2010/03/08
- 更新日
- 2010/03/08
南中校長室の窓
本日、第33回卒業式を行いました。肌寒い中で式が始まりましたが、式のあたたかさが伝わったのか、陽気がよくなってきました。
式辞の概要をお知らせします。
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式辞(第33回卒業式)
北から吹いていた風が、徐々に南風に変わり、五条川の桜のつぼみも花を咲かせようとふくらみはじめた今日の良き日に、本校第33回の卒業生として、巣立ちを迎えられた135名の皆さん、卒業おめでとう。
また、本日ここに第33回卒業式を挙行いたしましたところ、岩倉市長 片岡恵一様をはじめ、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜り、高い席からではございますが、心より厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
加えて、保護者の皆様、お子様のご卒業誠におめでとうございます。最も多感で、しかも著しい成長期のお子様が、こうして卒業のの日を迎えられ、感慨もひとしおかと、ご推察申し上げます。この間、本校の教育に関し、多大なるご支援、ご協力を賜りましたことにつきましても、改めて厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
芭蕉は、桜を見てこう詠みました。
「さまざまな こと思い出す 桜かな」
卒業生の皆さん、私は、4月に皆さんと出会ってからのこの1年間、幾度となく皆さんの姿に心を動かされてきました。
まず、何といっても4月最初に皆さんの授業を見た時です。デジカメを片手に、授業の様子を見ようと扉を開け、軽く会釈をし、顔を上げると近くの生徒と目が合いました。その生徒は、不思議そうな顔一つせず、にこやかな笑顔で会釈を返してくれました。体が熱くなりました。また、和気あいあいとグループで話し合い、学び合う姿を何度も目にしました。「とても仲がよく、明るく元気な生徒たちだなあ」と、心温まる思いで見ていました。
いろいろな行事を思い出します。
修学旅行での「宴会」。何が始まるのかと思えば、素人名人芸。ステージと客席が一体となるとは正にこのこと。あまりの楽しそうな雰囲気に、バスガイドさんが思わず見に見えましたね。また、和やかで盛り上がったボーリング大会。私の始球式は5本でしたっけ。中途半端でごめんなさい。もっと練習してきます。
夏の大会前には、各部の部長さんにインタビューしました。熱い思いや日頃の練習に対する信念を語る部長さんを中心として、大きく成長した活動ではなかったでしょうか。
応援、門柱、学級旗にあふれるパワーとエネルギー、自分たちでやりきる情熱を感じた体育大会。
南中ふれ愛フェスティバルには、豊富なアイデアや工夫、集中力、協力が散りばめられていました。
合唱コンクールでは、何と前代未聞の金賞二クラス。多くの先生に南部中史上最高と言わしめた学年合唱。
記憶に新しいのは、先日の「卒業生を送る会」。2年生の歌う「大地讃頌」に自然に声を合わせ、上手にリードし、一つにまとめ上げる。熱いものが込み上げてきました。
皆さんは、私たちの想像以上に、自分たちでお互いに学び合い、高め合ってきました。その姿は、本校の新たな伝統となり、確実に後輩達に受け継がれていきます。
たくさんの感動をありがとう。皆さんは、この3年間ですばらしく成長しました。立派に胸が張れる力を身に付けました。南部中で身に付けたものに自信をもってください。この南部中での生活を誇りに思ってください。
さて、今、日本は大変厳しい状況になっています。愛知県はもとより、日本、世界を支えてきた県内大手自動車メーカーさえも経済不況の波に揺られています。正に、見通しが立たない先行き不透明なとても不安な時代です。しかし、だからといって、この世を悲観するだけではいけません。このような時代だからこそ、熱く夢を語り、元気に、明るく、たくましく、前向きに、人生を楽しむことが必要です。
1991年の秋の話です。(今から22年ほど前、まだ、皆さんが生まれる前の話です)
大きな台風が日本に次々に上陸して、青森県のリンゴが九割も落ちてしまいました。九割ものリンゴが売り物にならなくなってしまったのです。リンゴ農家の人々は、肩を落として嘆き悲しみました。しかし、このとき、「大丈夫、大丈夫」と嘆き悲しまなかった人がいるのです。どんなことを考えたのでしょうか?
落ちなかったリンゴを「落ちないリンゴ」と名付けて受験生に売ったのです。それも一個千円で。すると、とんでもなく高いのに飛ぶように売れました。縁起をかついだのでしょう、受験生は「落ちないリンゴ!」と喜んで食べました。
その人は、うつむいて下に落ちた九割のリンゴだけを見ることなく、前を向き、(文字通り)上を向いて落ちなかった一割のリンゴを見つめたのです。落ちたリンゴを見続けていたら、「落ちないリンゴ」は生まれてきません。前向きに物事を考えることで、今までなかったものが生まれてくるのです。
エジソンは、電球を発見するのに一万回失敗したと言われています。「一万回も失敗して、ずいぶん労力や時間がかかり、大変でしたね」と言われたときに、「何をおっしゃるのですか。私は、うまくいかない方法を一万回も発見したのですよ。」
エジソンにとっては、失敗も一つの発見なのです。こう考えれば、失敗なんて恐れるものではありません。
同じ状況にもかかわらず、嘆き悲しむ人がいます。同じ状況にもかかわらず、それを楽しみ、さらに人にも喜ばれる人がいます。気持ちの持ち方で、物事は違う方向へ進んでいきます。気持の持ち方で、人生の局面が一瞬で変わるのです。
これから皆さんは、この南部中学校を卒業し、上級学校や社会に飛び立っていきます。これまで以上に厚く高い壁にぶつかったり、荒れ狂う高波にもまれたりすることがあるでしょう。そんな時、気持ちの持ち方を変えることにより、新たな光が見えてくることがあります。第33回卒業生の皆さん、南部中生としての自信と誇りをもって、うつむかず、前を向いてたくましく突き進んでください。皆さんが、さらに成長し、大きく「飛翔」することを心から願っています。
最後になりましたが、今日家へ帰ったら、ぜひ家族の方に感謝の気持ちを伝えてください。小さい頃から、多くの人に支えられてきましたが、何といっても、ひたすら皆さんの成長を願い、今日の日を心待ちにしてこられたのは、家族の方です。心をこめて「ありがとう」と言ってほしいと思います。
笑顔と活力に満ちた皆さんの前途に幸多かれと祈り、式辞といたします。
皆さん、さようなら。
平成22年3月8日
岩倉市立南部中学校長 藤 田 雅 則
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